2008年10月23日木曜日

昨日の「CROSSROADS」

英国トラッド・フォークを下敷きにして新たなロックの世界を切り開いたバンド、それがこのフェアポート・コンヴェンション。この作品は71年のものですでに主要メンバーだったリチャード・トンプソン(g)やサンディー・デニー(vo)は脱退して、エレクトリック・バイオリンの名手、デイブ・スウォーブリックが加入した。
元フェアポートのベーシスト、タイガー・ハッチングスがよりディープなトラッドを求めて作ったバンド。もっとも、その彼はわずか1年ほどでそこを去り、さらにフォーク色の強いALBION COUNTRY BANDを結成した。このアルバムはクリサリスに移籍後の中期の名作『BELOW THE SALT』。マディ・プライヤーの透き通った歌声がある種の神々しさを響かせる。
今さら言うまでもなく、ZEPは自らを「フォーク・ロック・バンド」と称し一般に言われたような「ハードロック」ではないことを強調していた。その是非や真意はともかく、彼らがフォークにも大きな関心を抱いていたことは、作品に如実に現れている。ブルースとフォークは元は同じ。その意味で、彼らにとってブルース・ロックもフォーク・ロックもその価値は同等だったに違いない。この3枚目では「スノウドニアの小屋」でトラッドへのリスペクトを示した。彼らが敬愛する女性フォーク歌手、アン・ブリッジスへのオマージュとも言われている曲。
今や、紙ジャケ/デジタル・リマスター・シリーズのカタログ系の中でも一番人気のあるプログレ。昔からの熱心なファンやテクノ世代の若者まで幅広い層にアピールしているらしい。このKEEFによるジャケット・デザインも見事なイギリスの5人組CRESSIDAはいわゆるB級ものかもしれないが、そのサウンド、演奏、音楽観などには傾聴すべきものがある。71年のデビュー作。
元NICEで活動していたキーボード・プレイヤー、キース・エマーソンが、より力強くルックス的にも魅力あるバンドを、ということで作ったのがKING CRIMSONのベーシストだったグレッグ・レイク、ARTHER BROWN'S CRAZY WORLD、ATOMIC ROOSTERなどで若手人気ドラマーとして注目されていたカール・パーマーらによるEMERSON LAKE & PALMERでこれがデビュー作。71年だったと思う。当時の人気音楽雑誌「MUSIC LIFE」でこのアルバムをレビューした記事を書いたのがぼくの音楽評論家のスタートでした。




 昨日はまだ体調今イチでしたが、月に一度のこのイベントは休むわけにいかない、という思いで、オルガン・バーに出かけました。

お客さんは多少普段より少なめだったけれど、新しく来てくれた方もいて、まずまず、ではないかと思う次第。お客さんの中にも風邪気味という方もいて、それでもわざわざ足を運んでもらえるのは嬉しい限りですね。

 テーマは最近自分がよく聴いているものの中から、ラジオでもここんとこ特集したりした「British Trad Folk」と「Progressive Rock」という大きなものを強引にふたつ取り上げてみました。どちらも、今では一部のマニアックなロック・ファンくらいにしか支持されていないという印象のジャンルのものだけど、それだからこそ、ここでやる意味があると考えています。普段の生活の中で、そういう音楽に出会うことはそうそうないし、仮に出会ったとしても、それを自覚出来るリスナーがどれくらいいるのかも疑問です。

 で、前半にフォーク、後半にプログレをやったんですが、音源には不足はないんですが映像はこのへんのはほとんどありませんね。色々探してはみたんですが、ほぼ全滅でした。特に、Trad Folkの方はまずそうした素材が見当たらないので困りました。
 取りあげたアーティストは、FAIRPORT CONVENTION,STEELEYE SPAN,FOTHERINGAY,INCREDIBLE STRING BAND,LED ZEPPELINとかで、イギリスの民謡ともいうべき古典的なフォークに根ざしたロックをやるバンド、といえば最近?ではPOGUESが一番有名ですが、そのPOGUESの遠い祖先にあたるようなのが、今ここに紹介したバンドたち。映像があったのは以前このイベントで紹介した「GLADSTONBURY FAYR」のDVDに入っていたFIARPORT CONVENTIONくらいのもの。ひとつひとつのバンドにコメントすると膨大な量になるので控えておくけど、このFIARPORTが60年代から70年代半ばにかけて活動し、当時大きな評価を受けたことで、ぼくらのような日本のロック・ファンに、そういうムーブメントが伝わってきたと言えます。メンバー・チェンジを頻繁に繰り返しその都度、それなりの結果を出して来たというのも凄いけど、そこから出たミュージシャンがその後シーンのキー・パースンとなった、という点でもJohn Mayall & The Blues breakersやYARDBYRDSにも通じる存在だったと言えるでしょう。
 特に、故サンディー・デニーと今も現役リチャード・トンプソンの存在はイギリスのロック・シーンに取り大いなる宝であると言っても過言ではないと思います。サンディーはZEPとも交友があり、ゲスト参加して美しい歌声を披露してくれています。リチャードはある意味アナザー・エリックともいうべき実に深い音楽性に高いテクニックとセンスに裏打ちされたギタリスト/シンガー/ソングライターです。そこから派生したのがSTEELEYE SPANでありFOTHERINGAYです。ですから、このタイプのものから何か一枚お勧めするとしたら、まずはこのFIARPORT CONVENTIONの『UNHALFBRICKING」か『LIFE & LIEGE」そしてメンバー交代後の『ANGEL DELIGHT』あたりがいいかも。もちろん、ジミー・ペイジに大きな影響を与えたPENTANGLEのデビュー作『PENTANGLE』もチョーお勧めです。

 プログレは、それだけで敬遠する人も少なくないみたいなんですが、理由がよく分かりませんね、ぼくには。個々のバンドに好き嫌いはあるとしても、そのジャンル全般が嫌いというのは、多分に偏見というか、先入観とかに起因しているのじゃないのかな?なんとなく難しそう、テクニック至上主義、曲が長い・・・など、イメージとしてとっつきにくいというのがあるような気がします。あと、マニアックなファンが多い、というのもあるかも。それは一部事実ですけど。でも、音楽に限らず、趣味とかはたいてい所詮はマニアックなものでしょ。お笑いでも、他人がまだ知らない芸人を探してひとり悦に入ってる、なんて人よくいますもんね。

 ともあれ、プログレはもともとは60年代のサイケデリックから生まれたと考えられます。自由で実験的な思想とパフォーマンスが根底にあり、それが時代やミュージシャンとうまく融けあい新たな音楽世界が開拓されたといったところでしょうか。
 今回はあんまり有名ではないけど、音楽的には十分に聴く価値のあると思うものを主にチョイスしてみました。これまでも、大御所たち、たとえばKING CRIMSON,EMERSON LAKE & PALMER,YESあたりは何度か紹介していましたが(今回もEL&Pの72年のブリュッセルでのライブとかの映像は紹介しましたし、YESの曲もエンディングにかけました)、それらの陰に隠れて一般にはほとんど目が届かないようなバンド、例えば、オルガンが素晴らしいイギリスの5人組CRESSIDAの71年のデビュー作『ASYLUM』から大作「Munich」を中心に、同じVERTIGOレーベル所属のほぼ同期、BEGGER'S OPERA,GENTLE GIANTなども紹介してみました。

 近年はテクノなどの流行りの中でこのへんの音楽やバンドが若者に注目されているようだけど、そういうことがきっかけでもいいと思う。でも、ネタ探しのみに終始するのではなく、バンドあるいはミュージシャンとしてそれぞれを聴いてみていただきたい。JUSTICEが好きだからとKRAFTWERKやCLUSTERなどのジャーマン・プログレに走るのは、いかにも上げ底感覚だし、むしろ、そういう時にこそ基本であるCRIMSONやEL&Pなどを改めてキチンと聴いて欲しいもの。
 何から聴いていいのか分からない、という人たちのためにも、ぼくはこういうトーク・イベントを今後も続けて行きたいし、ネット世界の案内人的な役割も、今後はより積極的に行っていきたい。

 来月のCROSSROADSは26日水曜日。是非遊びに来てください。

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