2009年8月10日月曜日

The Pretty Things


「The Pretty Things」 1965 1st ビクター VICP-62641  左から二人目ロン毛がフィル・メイ、ヒゲ面がディック・テイラー。




 有線の『LONDON NITE」チャンネルのために毎月2時間分の音源をちょこちょこと作ってるんですが、いつも締め切りに遅れてご迷惑をかけてます。

 まぁ、GRCがなくなって、代わりにLNが出来たのもなんだか皮肉めいてるけど、さらにここにきてレギュラーの毎週の「ロンナイ」も終わることとなり、そういう意味では「ロンナイ」が恒常的に存在するのは今後はラジオと有線だけ、ということになります。あ〜、自分でもこんな風になるなんて考えてもみなかった。


 そこで、まぁ、毎回いろんな曲やバンドを、放送用にチョイスするんですが必ずしもフロアー用でなくてもいいので、スローなものやいわゆるロンナイ的な一般のイメージとは違うものも普通に選んでいます。今回もアレコレ考えて選んだんですが、こうして選曲していると普段はあんまり気にしなかったことやモノが改めて見えてきたりして、自分でも驚いたり、感動したりします。

 ここでは、そんな1例を紹介します。

 入れたのは「Road Runner」。言うまでもなくかのBO DIDDLEYの名作で、いろんな人がカバーしてますよね。そして、それをやってるのがTHE PRETTY THINGSです。これもご存知の方も多いかと思うけど、BOの曲名から付けた名前ですね。
 60年代の初期、まだビートルズやストーンズの嵐が吹き荒れる前、63年にロンドンで生まれた彼らはギターのディック・テイラーを中心にお決まりのアートスクール仲間のフィル・メイをボーカルに据えて活動を開始、やがて64年、「Rosalyn」でシングル・デビューし、ブリティッシュ・ビートの仲間入りを果たした。この頃のエピソードで一番有名なのは、テイラーがまだ同じ学生だったミック・ジャガーとアマチュア・バンドをやっていたところに、同じ音楽仲間のキース・リチャーズがミックと古い幼なじみだということが分かり、その3人で活動していたんだけど、やがて、バンドが本格化する中で、テイラーはギターからベースに転向を余儀なくされ、そのことから彼はバンドを辞めたという話。
 ブライアン・ジョーンズが加入しなかったら彼はそのままストーンズとして名声を得ていたのかもしれない。でも、それをして、彼が不幸だと言うのはあまりにもアンポンタン。後からなら何とでも言える。けど、その頃の彼らは単に好きな音楽をやっていたいだけで、成功も何もまるで約束されてなどいなかったんだからね。

 だからか、彼らのサウンドはストーンズによく似ている。しかし、ストーンズ・フォロワーではない。それどころか、よくよく調べてみると、彼らの方が「不良度」や「反体制度」ではストーンズの上をいっていたという指摘もあるほど。このCD(リイシューの紙ジャケ・シリーズでビクターから小松崎健郎さんの監修、解説が素晴らしい)にもそのへんのことやインタビューなどが解説に載っているので是非国内盤を購入されることをお薦めしたい。

 BOを始めとするR&Bやブルースが大好きで、それを自分たちの好きなようにやるのを何よりの身上としていた彼らだが、当時のイギリスの批評家やブルース愛好家からは拒絶され、テレビからも「髪が長過ぎる」「ヒゲが汚い」などの理由で敬遠され、ほぼ成功からは縁遠い世界をさまようことになる。でも、一部では熱心なファンも当然いたし、今ではストーンズやアニマルズ、ゼムなど以上に愛好するマニアックなファンが増えているのも事実。過大評価はいけないけど、彼らの場合には、これまでが過小評価だったから、ちょうどバランスがとれたのかもね。

 でも、テイラーさん、足が短かいし、メンバーも決してルックス良くないから、やっぱ、ストーンズにはなれなかったんじゃないかな。見た目は今以上に重要なポップ・シーンだったから。

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