2009年5月9日土曜日

最近の解説で


MASA ITO COLLECTIONシリーズの1枚、COCKNEY REBELの「美しき野獣の群れ」 EMI JAPAN TOCP-70737


 最近はCDの解説とかあんまり依頼が来ないんですが、まぁ、時代が違うというか、昔は待っていれば普通に来たんですけど。

 もう、現役じゃないと思われてるとまでは思わないけど、今のメーカーの制作担当者の人たちは仕事の量も質も変わって来てるんで、忙しくてついついお馴染みのライターさんに発注してしまうみたいです。それって、基本的に雑誌の編集者とかで、フリーのライターというか、昔ながらの音楽評論家ではないんですよね。

 それで、お呼びがかかるのは、昔の音源とかが多く、それも案外同じ人たちが持ち回りみたいにやってるので、そう簡単にお鉢は回ってこないんですが。その中で、今回ここに紹介したのは数少ない例外?のひとつで、と言ってもこれも見づらいかもですが、帯にあるように、伊藤政則さんからの依頼で、メーカーの担当者から直にではないんです。

 モノは70年代のイギリスの隠れた素晴らしいポップ・バンド、 Cockney Rebelの73年のデビュー・アルバムです。73年と言えば、ぼくが初めて海外に出た年で、大学4年の時です。すでに音楽評論家として仕事をしていました。レディング・フェスを見るために夏休みを利用してイギリスに行ったんですが、お金があんまりないので格安だった、いわゆる「南回り」経由での旅でした。今じゃ信じられないかもしれないけど、当時はまだまだ航空料金が高く、確か円相場も固定レートでしたから、つまり1ドル=360円換算で、そんなにラクには行けなかったんです。パキスタン航空であちこちの都市を回り、ベルギーまで行き、そこから乗り継いでロンドン、というスケジュール。
 途中、飛行機の故障とかまり、テヘランでは一度市内のホテルまで案内され、風呂を一浴びしたと思ったら、「出発です」なんてこともありました。で、38時間くらいかかってロンドンに到着した次第。

 そんな時代、ロンドンはグラム・ロックが全盛期で、街中でそんな曲がかかっていたのを思い出します。スージー・クアトロの「48クラッシュ」とかメディシン・ヘッドの「ライジング・サン」はよく聴いた気がします。その頃のぼくのお気に入りは、ロリー・ギャラガーにステイタス・クオー、フェイセス、リンディスファーンとかがメインでした。

 話が少しソレました。
このCockney Rebelはジャケを見ても分かるように、時代が時代なんでお化粧して服もサテンとか光り物系で、まず見た目はグラムです。この帯にも誰が書いたのか(セーソク?)「黄昏の欧州のモダニズムとロマンティシズムをグラマラスにドレス・アップして70年代のロンドンに舞い降りた禁断のヒーロー、スティーヴ・ハーリー率いるコックニー・レベルのデビュー作」という、息継ぎどこでするの?な長いコメントがあります。さらに「耽美と狂気の間に咲いたシュールでポップな逸品」ともあります。なんか大げさですよね〜。そこがいかにもセーソクらしい、といやそうなんですけど。
 ちなみに、これを来週の渋谷FMでの「ROCK YO TOWN」でミニ特集するんですが、音を聴いたカッチンいわく「この帯コメはない方がいいっすね〜。これ読んだらオレ多分聴かないっすよ」だって。
 そうかもですね。音を聴く前にイメージがある程出来てしまうと、それでイヤんなる人もいるでしょうから。何だよ、グラムか、とね。

 実際の彼らの音楽は解説にもキチンと書いたように、決してグラム・ロックの生き残りなんかではなく、グラムを通過した新たなイギリス流のモダニズムに貫かれたポップ・ロック、とでも言うべきもので、サウンドも広がりがあるし、音楽性もプログレ風からカリビアンなタッチまで取り込んだ面白いものです。10C.C.なんかにも通じるものがあるかな。

 出来ればCD買ってみて欲しいですね。ねじれたポップ感覚は、この時代に特有のものであり、イギリスのロックのある意味伝統的なセンスでもありますから。イギリスのバンドじゃないけどSPARKSとかも雰囲気は共通するし、先に出ててぼくが解説書いたビル・ネルソンのBE BOP DELUXEなんかとも似た部分はあります。まぁ、あの時代クィーンやバッド・カンパニーだけではなかったことは確か。

 また、時間あれば音楽話します。なんでロリー・ギャラガーがそんなにいいのか、とかチキン・シャックのギタリスト、スタン・ウェッブにそんなに入れ込むのはなんでか、とかね。CROSSROADSのブログ版です(笑)。

2 件のコメント:

nerory さんのコメント...

今の今までOiパンクのCockney Rejectsとごっちゃにしてました。。(@_@)
YouTubeで音を確認してびっくり。
良いですね~。

crossroadsも見せて(聞かせて)いただきました。
夜間はなかなか出られないので、こうして聞かせていただけるととても嬉しいです。
録音・編集された方もありがとうございました。引き続き是非(笑)。

KENSHO ONUKI さんのコメント...

neroryさん
 そういう人案外多いですよね。ま、時代があまりに古いですから(苦笑)。

 BE BOP DELUXEの「AXE VICTIM』というのも是非聴いてみてください。イイですよ。